ヤンキーになりたかった

食う寝る遊ぶエビデイ

「芸能人だと誰が好き?」さて、どう答える?

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「芸能人だと誰が好き?」

年度末の飲み会で、先輩の女性社員からそう訊かれた。

私はいつものことながら、回答に窮してしまった。

 

飲みの席の会話の殆どは、非生産的な話題に占められている。

これに首肯する者は少なくないだろう。

例えば「俺らマジで濃いメンツだよなー」。

私とて、それについて憤りたいわけではない。

飲み会とはそういうものだ――それもわかる。

しかし、「芸能人だと誰が好き?」のような質問はどうにも苦手なのだ。

 

先述の「芸能人だと――」という質問にはいくつかのパターンがある。

「芸能人で言うと誰がタイプ?」「芸能人だと、誰と付き合いたい?」等々。

これらの質問は、芸能やカルチャーに関する質問ではない。

恋愛について、それも好きな異性のタイプについての質問である。

 

 あたし達は、何かをかくすためにずっとお喋りをしていた

ずっと

何かを言わないですますためにえんえんと放課後お喋りしていたのだ

岡崎京子リバーズ・エッジ』)

 

岡崎京子の漫画において、女子高生たちは意味のないお喋りをする。絶望的なまでの「退屈」を覆い隠す。彼女らは「平坦な戦場で」「生き延びる」ために「くちびるから散弾銃」を放つ。

そういえば、教室などの空間で散見される、情報伝達より相互承認を目的とした会話を「毛づくろい的コミュニケーション」と呼んだのは斎藤環だったか。

まあ、そんなことはどうでもいい。

 

飲み会であっても、内容こそ女子高生のそれとは当然異なるが、同様の会話は行われる。

いやむしろ先述のように、そのような会話つまり締めの時間までの暇つぶしの方が主なのではないだろうか。

飲み会は「何事もなさぬにはあまりにも長い」*1

 

会社の飲み会では仕事や職場の話が多くなる。説教や人格攻撃にならない範囲であれば、その方が平和だし良いんじゃないか、と思う。

しかしそれだけでは飽き足らないとき、別の話題が展開される。

子供の話とか、旅行の話とか、そして恋愛についての話とか。

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恋ならば、誰もがしたことがあるだろう。

ラブソングは「100万人のために唄われ」るのだから*2

恋愛の話が「鉄板」となるのは、きっとそんな理由だ。

 

恋愛論みたく何かを論じる会話は好まれない。

性格がどうとか、そんな話も抽象的すぎて盛り上がりに欠く。

だから恋愛の話は、まず恋人の容姿とくに顔という「即物的な」話に行き着く。

「彼女(彼氏)の写真見せて」は、飲みの席の定番フレーズだ。

それは勿論、恋人がいない人に対しては使えない。そういった人には、まだ見ぬ恋人について語ってもらうほかない。

しかし、「耳の形が良くて」とかパーツ単位で話されても、イメージしづらくて盛り上がらない。

だから芸能人という広く知られた人物を引き合いに出して「好みのタイプ」を語る事が求められる。

 

恋愛の話は、先述のとおり、いわば暇つぶしであり戯れである。「芸能人だと誰が好き?」も同様に。

だからそこで大事なのは、挙げられた芸能人の名を聞いて、その場の皆が「あー、わかる」と言えることなのだ。

つまり、多くの人が知っていて、皆が魅力的な部分を見出しやすい人物こそが望まれる。

 

じゃあ男性の私は誰もが美人と認める女優を挙げれば良いかというと、話はそう単純でもないから難しい。

厄介なのは、この「芸能人で言うと誰がタイプ?」という系統の質問に「異性を見る目」のテストの側面もあることだ。

そしてそれは、会話が男女混合である場合、より強調されることとなる。

 

「女性から好きな芸能人を訊かれたときに、長濱ねる、広瀬すず吉岡里帆は三大禁句」

というのは冗談にしても、男性があまりにも男ウケの良い「あざとい」人やあまりにも美人な人を挙げると、あまり良い印象を持たれない傾向にあるらしい。

浅はか、とか、理想高すぎ、とか。

これは合コンに関する様々な記事に書かれている。

少なくとも、女性は「好きな芸能人」の回答で男性を審査している。まあ男性も同様に。

 

その先に待つ結果がどうであれ、その審査に合格すればポジティブな印象を、失格すればネガティブな印象を相手に与えることは相違ない。

そして、自らネガティブな印象を植え付けたい場面というのは限られる。

だから基本的には「正解」を目指すことになる。

そこではちょうど良いギリギリのラインを攻めるハンドルさばきが要求される。ラリー競技のコーナリングみたいに。

コミュニケーションの合格基準点が高すぎる。

 

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さて、冒頭の話に戻る。

「芸能人だと誰が好き?」

「芸能人だと、誰が可愛いって思うの?」

そうマシンガンの如く訊いてきたのは、先輩の女性社員だった。

 

この質問は、同僚の恋人の話から派生したものだった。

状況から言って、これは恋人がいない私の恋愛能力を審査するための質問と解釈できた。

つまりここで「あまりにも」な名前を言うと、「それじゃ彼女できないわ」となるわけだ。

彼女が以前の飲み会で、なぜ結婚しないのかと未婚のアラフォー男性社員を数人がかりで詰問していたと聞いたことがある身としては、当然のことながら穏やかな質問ではなかった。

ミスに怯え、私はけっきょく何も答えることができなかった。

 

一言も喋らない私に業を煮やしたのか、先輩は具体名を挙げて訊いてきた。

「橋本環奈? ねえ、橋本環奈? 橋本環奈好きなんでしょ?」

それは「あまりにも」なやつでは? とは思ったが、かと言って、別の名が思い浮かぶでもなかった。

「いや、好きというわけでは……」

曖昧な否定も及ばず、私の好きな芸能人は橋本環奈ということになった。

 

合点した先輩の表情は「はいはい、橋本環奈好きなのね」と語っていた。

「ふーん、ま、それならそれでいいですけど」みたいな、そんな軽蔑がそこには含まれていた。

え、自分でそういうふうに話を持っていったのに理不尽すぎでは……。

 

怒ったかんな。許さないかんな。橋本環奈……おっふっ。

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 ……というわけで、「芸能人で言うとだれがタイプ?」問題はまことに難しい

いや、あるいはこれは、考えすぎるやつは飲みの席の会話に向かないというだけの話だったのかもしれない。

いずれにせよ、会話というのは実に難しい。

 

そういうわけで、「ヤンキーになりたかった」では、ちょうどいい回答例を募集している。

ちなみに私は、一色いろはさんが好きです。