ヤンキーになりたかった

食う寝る遊ぶエビデイ

ゲーム脳の思い出と、街を闊歩するZOZOSUIT野郎

ゲームをしなくなって久しいが、このあいだ会社で柄にもなくゲームの話をしてしまった。

そのせいか、ふと「ゲーム脳」なる言葉を思い出した。

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ゲーム脳とは、日本大学文理学部体育学科教授の森昭雄が、2002年に出版した『ゲーム脳の恐怖』(NHK出版)内で提示した造語である。

森によれば、ゲームを頻繁にプレイする人の脳は認知症患者のそれと同じような状態になっているという。その状態を森は「ゲーム脳」と呼称し、警鐘を鳴らそうとした。

無論これは似非科学の類である。それにそのゲーム悩状態は短時間のお手玉を2週間続けることで解消されるというのだから、テクノフォビア的なビデオゲームアンチのプロパガンダであると断定してもいいだろう。NHK出版だし。

 

さて、「ゲーム脳」はあくまで脳の状態を指す言葉だった。しかし私の母は、そのキャッチーな言葉に別の意味を勝手に付与してしまった。

 

1999年7月23日、羽田空港新千歳空港行のANA61便は、包丁を持ち込んでいた当時28歳男性にハイジャックされた。犯人はフライトシミュレータのゲームを趣味としており、機長に対し自身に操縦を行わせるよう要求した。最終的に犯人は私人により現行犯逮捕され墜落は免れたが、犯人の要求を拒否した機長が刺殺された。

母はこの事件の犯人が述べた「レインボーブリッジの下をくぐってみたかった」という犯行動機を以て、「ゲーム脳」という用語にゲームと現実の区別がつかなくなること*1という意味を勝手に与えてしまったのだ。

つまり、前にもハイジャック事件があったけどあのとき思ったゲームと現実の区別がつかないこと、あれが「ゲーム脳」なのか! というわけである。

 

2004年6月21日、佐世保市内の小学校で当時小学校6年生だった女児が同級生女子児童をカッターナイフで切りつけ殺害する事件が起こった。佐世保市小6女児同級生殺害事件である。

加害女児は事件後、被害女児が「生き返ったら謝りたい」と述べたとされているが、これが母の逆鱗に触れた。死んだ人が生き返るわけがない。そう思うのはゲームのコンティニューシステムのせいだ! と言うのである。んな阿呆な

しかし母は至って真剣だったようで、私に「人って生き返ると思う?」と訊いたらしい。記憶はないが、私はそのとき「そんなわけないじゃん」と答えたらしい*2。これは母のお気に入りのエピソードらしく、就活でなかなか内々定が出ず父が「俺は子育てに失敗したんだな!」と口走ったときも、このときの回答を聞いて自分は子育てに成功したと思ったのだと慰められた。なんだこれ地獄か

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母の言うゲームと現実の区別がつかないという話を上記のように一笑に付すことは簡単だが、しかしアニメやゲーム内の概念も含めた本来無関係なはずの知識を参考にして現実世界を解釈してしまう認識のバグがしばしば起こることもまた事実である。

例えば中途半端な行き止まりの道を見ると、これはイベントをこなし後に解禁されるマップだな、と思ってしまったり、口頭での会話の中で「いいね!」ボタンを押したくなったり。

私たちの認識する「現実」は、すぐにそういう本来無関係なはずの知識によって浸食され、拡張される。

 

最近よく遭遇する認識のバグは、街中で見かけるマーブル模様の服についてのそれで、もうあれがZOZOSUIT(ゾゾスーツ)に見えて仕方がない。

 

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ZOZOSUITとは、オンラインアパレルショップZOZOTWONを運営する株式会社スタートトゥデイが発表した体型測定スーツである。

全身にドッドマーカーの付いたボディスーツを着用し、スマートフォンのアプリでそれを撮影することで体型を測定する仕組みを採用しているのだが、その目的上、ZOZOSUITはごくプライベートな空間で使用されることが前提となる。

しかし、である。認識のバグは反射的に起こるものだ。認識のバグは思考に先立つ

だから、ZOZOSUITを着て歩く人はいないと分かっているはずなのに、不意に街中でマーブル模様を見ると「あ、ZOZOSUITだ!」と反射的に思ってしまう。無論すぐに「いや、違うわ。そういう柄なだけだわ」と思い直すのだが。

 

このバグで困るのは、どうやらあの柄の服を着ている人がそれなりに多くいるらしいことだ。それもわりと幅広い層が着る柄らしい。このことは、ZOZOSUITの登場後はじめて認識した。

おかげで、私はその柄を見るたびに反射的に「あ、ZOZOSUIT!」。私の認識では、街中はZOZOSUITを着て歩く不審者で溢れかえっている。もちろんそんなことはないと分かっているつもりだ。しかし、私は何度もマーブル模様に騙されている。

あと何度マーブル模様を見れば、それがこのバグの修正パッチになりうるだろうか……。

 

こんなところで認識のバグという現象を再認識したくなかった。

それにZOZOSUITは、やっぱりあのガンツスーツみたいなデザイン/方式のほうが、未来テクノロジー到来感があって楽しげだったな……。

私はガンツスーツを着たかった。二宮和也になりたかった。

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もしかしたら私が見かけたマーブル模様のなかには、違うと思いこんでいるだけで本当にZOZOSUITを着ていた人がいたのかもしれない。

ボディにピッチリとフィットする真っ黒なガンツスーツよりその可能性はありそうだ。

あの娘、ぼくがZOZOSUIT着て街に繰り出したらどんな顔するだろう? 私が「あの娘」ならそんなのは嫌だが、あるいはニノなら許されるんだろうか。

 

ニノになりたい。もうニノになるべきなんじゃないかって思い始めた。

そして時々サクラップ

頭上に悠然とはためく 漠然とした夢を掲げ

この道の先はまだまだ見えず 失敗からしか何一つ学べず

 

今回の話は、まあなんていうか、そんな話。

 

*1:そもそも「現実とゲームの区別がつかなくなる」という言葉も、どのような状態を指すのか曖昧だが。

*2:そこで「うん」と答えていたらそのまま死の不可逆性を己の身体で証明させられていたまである。