ポプテピピック、蒼井翔太のヤバい〇〇だった説
狂気、狂気。クソアニメ、クソアニメと評判だったTVアニメ『ポプテピピック』12話で、これまでとは比較にならない狂気が発生してしまった。
本稿は、その12話の感想文だ。以下、ネタバレを多分に含む。
TVアニメ『ポプテピピック』は、声優がコロコロ変わること、制作者が異なるいくつものパートから成立していること、AパートとBパートの内容が同じであることなどから、1話放送時点から話題になっていた。
そのことは、このニコニコ動画の1話再生回数が物語っている。
その特異な構成やパロディ元、主題歌「POP TEAM EPIC」の歌詞から、このはちゃめちゃなアニメには裏があるのではないか。実はこの様式それ自体が伏線なのではないかという憶測をする人たちが現れた。
彼らは自分たちを「ポプテピピック考察班」と名づけ、放映後に自身の説をツイッター上で発表するようになった。
私は、正直言って彼らの説が当たるとは思っていなかった。
むしろ、そのような予想に対し「中指を立てる」ような展開こそが起こると期待していた。
けれど、3/24 25:00からTVアニメ『ポプテピピック』の12話(最終話)が放映され、その結果、果たして彼ら考察班の考察は、当たらずも遠からずな、いい線をいっていたことが判明した。
とある決定的な一点を除いては。
彼らの考察によれば、TVアニメ『ポプテピピック』は壮大な百合アニメであり、どのような選択肢を選んでも幸せになれないポプ子を救うべくループを繰り返すピピ美の物語であった。
つまり『魔法少女まどか☆マギカ』になぞらえれば、ポプ子=鹿目まどか、ピピ美=暁美ほむらという構図が成り立ち、そしてループはピピ美の能力によってもたらされていると考えられていたわけだ。
だが実際には、そのループは蒼井翔太の能力によってもたらされているものだった。予想できるわけねえだろ、こんなもん。馬鹿かよ。
しかし、最終話まで見てしまった私たちは、この展開がまったくの突飛なものではないと言えてしまうし、むしろ蒼井翔太の登場は必然であるとまで言えてしまう。どういうことか。それがこの記事の主眼でもある。
私たちは、TVアニメ『ポプテピピック』のループ説を考える際、順当に方法順で作品世界も進行していると考えていたはずだ。
つまり、1話Aパート→1話Bパート→2話パート→…→11話Bパートというように。
そして、ピピ美は同じ「世界をリメイク」し、しかし2回以上うまくいかなかった場合、別の「パラレルワールド(に)旅して」いたのだと。
しかし12話で、世界をループさせていたのは蒼井翔太であることが判明した。そして蒼井翔太が初めて登場したのは12話Aパートであった。そのため、むしろループはここから始まったのではないかという仮説が立てられる。
つまり、1話Aパート→2話Aパート→…11話Aパート→12話Aパート→1話Bパート→…12話Bパートというように。
ここで、声優リセマラについて考えていこう。リセマラ回と言われた1話(Aパート: 江原正士・大塚芳忠、Bパート: 三ツ矢雄二・日高のり子)を除いて、AパートとBパートの声優は、女性声優ペア→男性声優ペアという形をとっていた。これは2話以降のエンディングテーマも同様である。
これにより、Aパート/Bパート=女性(声優)/男性(声優)という二項対立が導出される。作品世界は、蒼井翔太の力を借りて女性声優世界から男性声優世界に移行したのだ。
(以下に、担当声優リストの一部を貼る。WIkipedaのスクリーンショットである)
だがここで問題が生じる。この世界の移行自体は、何の解決も齎さないということだ。
男性が女性より優位であると言える根拠は何もない以上、男性声優世界に移行したとしてそれがよりより解決に寄与する根拠も同様にないからだ。
このままでは、女性声優世界と男性声優世界を繰り返し続けるループの監獄に陥る可能性が高い。村上春樹「かえるくん、東京を救う」(『神の子どもたちはみな踊る』所収)におけるかえるくんとみみずくんのせめぎ合いのように。*1
だから本当に望まれるのは、この古びた二項対立を脱構築することであり、それこそがループを脱出する=ハッピーエンドを迎える条件だ。そしてそれが出来るのは、性別蒼井翔太である蒼井翔太しかいない。
そう考えていくと、新たな狂気の可能性が浮上する。
まさか、
「ループしていることにしよう」
「なら、男性声優と女性声優それぞれで組みを作って半分ずつやらせよう」
「だったら蒼井翔太がぴったりですね!」
という会議が開かれることがあるだろうか。
おそらくない。そんな都合よく事が進むわけがない。
むしろ順番が逆で、蒼井翔太ありきで12話が作られたと考えたほうが自然だ。
つまり、TVアニメ『ポプテピピック』は全編を通じて、漫画『ポプテピピック』(竹書房)のアニメ化という形をとった、蒼井翔太のアニメ化(実写)だったのだ!!
そしてここにこそ、最大の狂気が潜んでいる。
パロディの数々、AC部、世界最速再放送、1キャラに24人以上の声優をあてること、中指を立てることなんて目じゃない。
この狂気がいちばんヤバい。
TVアニメ『ポプテピピック』の企画・プロデューサーを務めた須藤孝太郎は、声優バラエティ番組『上坂すみれのヤバい〇〇』の企画・プロデューサーを務めた人物でもある。
あちらの番組も、なかなかに狂気的であった。
『上坂すみれのヤバい〇〇』が12話に渡って上坂すみれを使って遊ぶ番組であるとするならば、TVアニメ『ポプテピピック』は、蒼井翔太(が持つとされる能力)を使って12話を遊んだ、正確に名付けるならば『蒼井翔太のヤバい〇〇』であった……。
【最後に】
ちなみに、12話Aパートで登場した蒼井翔太は、多くの方が指摘されているが、おそらく映画『KING OF PRISM』シリーズに登場する如月ルヰのパロディになっている。
TVアニメ『ポプテピピック』の歌パートで活躍した武内駿輔が大活躍するので是非見てほしい。
*1:『魔法少女まどか☆マギカ』における、TVシリーズで出現した女神としての鹿目まどかと劇場版(『叛逆の物語』)で出現した悪魔としての暁美ほむらが、互いの結論を否定し合うことが仄めかされた、現時点でのシリーズの結末もまた想起される。