ヤンキーになりたかった

食う寝る遊ぶエビデイ

先輩のパンツにモヤモヤした

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大学1年生の時分、先輩のパンツを見たことがある。時が経つとともに多くの記憶は脳からこぼれ落ちていくものだが、そのときの記憶は、いまでも脳裡にしっかりと焼きついて離れない。

と言っても、男の先輩だ。だから男のパンツの話だ。

これはエッチな話でもエッチの話でもない。釣られた方は申し訳ない。じゃあ、注文を聞こうか

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私は当時、ある舞台系のサークルに所属していた。

定期的に公演を行い、集客数やアンケートの結果に一喜一憂するような、ありがちな演劇サークルだった。何か特徴を見出すとすれば、脚本を自分たちで書いていたことだろうか。しかしそれとて大して珍しくもない。

そして、そんなサークルの説明は、今回の記事とはほとんど関係がない。

 

さて、サークルにはパンツが見えるサークルと見えないサークルがある。私が大学生活で得た知見だ。

語ると長くなるのでここでは触れるだけに止めるが、パンツが見えることは、性に奔放であるとかセクシーであることとは無関係の、ただの身だしなみの問題である。

私の通ったキャンパスには2つの舞台系サークルがあって、私が所属していたほうはパンツが見えるほうの、所属しなかったほうはパンツが見えないほうのサークルだった。

 

話を戻そう。兎角その日、私は先輩のパンツを見た。

その日は公演の準備を行う仕込み日で、照明機材(灯体とうたい)の吊り込みを行っていた。バトンと呼ばれる棒に灯体を吊るしていくのだ。

灯体に役者が頭をぶつけたり、パネルと呼ばれる舞台を囲む板と灯体が重なってはいけないので、灯体は吊るすならば当然高いところに吊られる必要があり、バトンも高い位置にある。だから吊り込み作業では、作業者は高いところ(多くは脚立)に登り、その上で身体を伸ばすことになる。

パンツが見えたのは、倒れぬよう私が押さえていた脚立に登っていた先輩が、その「伸び」をしたときだった。

色は詳しく覚えていない。灰色だった気もするしライムグリーンだった気もする。

ぶっちゃけ興味はなかったし、そもそも私はパンツが見えるサークルにいたのだから、いつもパンツを見ている余裕で、心の中で鼻くそをほじりながら「また見えてんなー」くらいに思っていた。

 

 二転三転して申し訳ないが、また別の思い出話をさせてほしい。

私は大学時代に1年間だけドイツ語を履修していた。ちょうど大学1年生のときだ。ドイツ語の授業は週に4コマあって、文法や語彙の基礎から教えられていた。

色も定かには覚えていない先輩のパンツ。その腰のところ、ずり落ち防止のゴムが入っているあたりには、デカデカとした文字で「klein」と書いてあった。

習ったばかりの知識によれば、ドイツ語で「klein」とは、小さいという意味だった。

 

 ……いや、待て。待ってくれ。「小さい」ってどういうことだ。

男性用のパンツに「小さい」って書いてあったら、もうドイツがどんなふうに「小さい」のか、迷いもなく決めて書かれてしまうくらい明白じゃないか。

これではモーツァルトのかの有名なセレナード「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」(Eine Kleine Nacht Musik)も、もう穏やかな気持ちじゃ聴けそうにない。夜に「小さい」ってなんだよ。

 

アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク~モーツァルト名曲集

アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク~モーツァルト名曲集

 

 

べつに私も、アレのサイズで何かが決まるというナニ原理主義者じゃない。

それに私自身とて自分のアイツについてbe proud ofしているわけじゃない。

銭湯とかで誇らしげにアソコのあの子をぶらんぶらんさせているやつを見るとちょっと引いてしまうぐらいだ。私の戦闘力は53万ですってかよ。寒すぎるだろ。湯冷めするわ。

けれど、だからといって男性用パンツに「小さい」って書く必要はないんじゃないだろうか。日本には古来より言霊信仰がある。これでは本当に小さくなりかねない。あるいは、ジョニーの成長はもう完了したという強い意思表明を着用者に求めるタイプの、選ばれし武具みたいなものなんだろうか……。

伝説の鎧だかなんだか知らないけれど、とりあえずそのパンツを隠してくれ。

先輩のパンツはたぶん私以外にも見えているし、その「小さい」って文字もたぶんいろんな人にめっちゃ見えている。

 

 しかし、そんなことが小心者の私に言えるわけがないし、あとでこっそりと「なんでパンツに小さいって書いてあるんですか?」などと訊けるべくもない。

いくら先輩が、自動車免許を取ったときに貰える初心者マークを股間にあてがい「初心者!」とギャグをかませる茶目っ気を備えている人だと言っても、そんなことは断じて言えない。

だから、他の人や着用していた先輩本人がその「小さい」についてどれほど認識していたのかを私は知らない。

ただ私は、そんな仕込み日に見えた先輩のパンツの文字にモヤモヤしながら、舞台の本番を迎えるほかなかった。

いらないことを考えていたら、それまで一度も飛んだことがない箇所でセリフが完全に飛んだ。

 

ちなみに、この話には後日談がある。

あまりにもファッションに疎かった私は、衣服や下着のブランドをほとんど知らなかった。まあ今でもそんなに詳しいわけじゃないが、当時はもっとひどかった。

カルバンクラインというブランドがある。私も聞き覚えこそあったが、それが世界的ファッションブランドの名前であるとは知らなかったし、当然そのスペルも知らなかった。

カルバンクラインは、Calvin Kleinと表記する。それを知ったとき、あのときの「Klein」とはもしやこいつの片割れだったのではないかとようやく思い至った。

調べてみると、カルバンクラインCalvin Klein Underwearとして下着の事業も手掛けているというではないか。

これはもうほぼ確定である。

かくして私のくだらない疑問は、あっさり氷解した。

世界的なブランドということだから、もしかしたら途中からこのオチに気づいていた方も多かったかもしれない。

※この画像を商品画像を見ても、Kleinだけが見えたのはしかしやや信じがたい……。 

 

だが、待ってほしい。そもそもカルバンクラインってどうしてカルバンクラインなどというのだろう。

調べてみればそれはブランド名であると同時にデザイナーの名前なのだという。つまり彼は、自分の名前が思いっきり入った世界的に展開しているということになる。

とんだ変態ではないか。

このことに思い至って以降、今度はこれが気になって仕方がない。

 

私はまだ先輩のパンツでモヤモヤしている。